「ポキッ!」と関節が鳴るのはどんな意味?
膝を曲げたり伸ばしたりすると関節が「ポキッ」と鳴ることがあります。何度も同じ個所で音が鳴ると「関節がズレてるのかな?」と思ったり、ストレッチなどを行っているときに音が鳴ると「ズレてた関節が整ったんだな」と思っている人が多くいます。そのため、何度も骨を鳴らして身体のズレを整えようとすることもありますが、関節から音がしても身体のズレが整ったわけではないと言われています。関節を動かしたときに鳴る音の正体は、気泡の破裂音だという説が有力です。
人間の関節は関節包という膜につつまれています。関節包の中は滑膜や軟骨で守られていて、関節の動きをスムーズにする潤滑油の役割を果たしている滑液が分泌されています。関節包は関節内の代謝や栄養交換のために存在していますが、代謝の過程で気泡がたまってしまうことがあります。この気泡は、普通は周囲の血管に吸収されていくのですが、血行が悪くなると血管が空気を吸収できなくなってしまうため、だんだんと気泡が集まって大きくなっていきます。関節を曲げたり伸ばしたりすると関節包の中の圧力が変化するため、大きな気泡によって関節を動かしにくいような感じがしてきます。それでも無理に関節を動かすと、大きくなった気泡が位置を変えることで関節液に衝撃波が生まれます。その衝撃波が骨にあたって骨を振動させることでボキッという音が鳴ってしまうと言われています。そのため「骨がボキッと鳴ったらスムーズに関節が動くようになったから、ズレている関節が整ったんだ」と思ってしまいがちですが、実は関節がスムーズに動かない原因はズレではないのです。スムーズに関節が動かせるようになったのは、大きくなって関節の動きを邪魔していた気泡が衝撃波によって小さくなって散り散りになったため動かしやすくなったのです。また、関節を曲げたり伸ばしたりすることで関節周りの靭帯や筋肉が動くようになり、一時的にでも血流が良くなるため溜まっていた老廃物や疲労物質が押し流されるため「楽になった」と感じてしまいがちなのですが、実際はズレていた関節が整ったわけではないのです。肩こりなどで肩を回しているとゴリゴリと鈍い音がすることがありますが、あの音は筋肉が長い時間に渡って動かなかったことによる緊張によって作られたコリが慢性化してしまっていることが原因のため、関節を動かした時にボキッと音が鳴るものとは別のものになります。この場合には音が鳴らなくなるようにストレッチなどを行ったり筋肉を温めて血行を良くしたり、関節を動かすことでごりごりとした音もなくなり、肩こりも解消されていきます。
よく患者さんから「肩甲骨がゴリゴリ言うけど何?」「首を鳴らしてしまうんだよね~」なんて聞かれますが、実はそういう事なのです。
関節がボキッと鳴るとその部分が楽になるような気がして、何度も癖のように鳴らしてしまう人もいます。しかし「関節を鳴らしすぎるのは良くない」と言われているように、あまりにも何度も関節を鳴らしていると大きくなった気泡から生じた衝撃波が、関節の内部を壊しているという説もあります。関節を鳴らすことで関節の内部に損傷が生じてしまっても、ストレッチをして楽になった、という体験を繰り返していると「気持ちいい」と感じてしまうことがあります。身体を動かしたときに自然に音が鳴ってしまったものは仕方ありませんが、故意に何度も音を鳴らそうとして関節に無理な力をかけると、かえってダメージを与えてしまう結果になりかねません。逆に関節を鳴らしてしまったことでだるさや痛みが生じてしまうこともあります。「指を鳴らすと太くなる」と言われるのも、故意に関節に無理な力をかけることで靭帯や筋肉が必要以上にストレッチを繰り返すことになるため力が弱くなり、関節を支える力が弱くなってしまったり炎症を起こしてしまうので、その修復のために骨が変形したり太くなってしまうと言われています。その結果、骨が太くなって指の関節が太くなってしまうのです。これは指だけに言える話ではありません。膝や腰などにも骨を鳴らすことで故意に負担をかけ続けると骨の変形などが生じてしまう可能性があります。特に首や腰の場合には骨の中に髄液が入っています。そのため無理に関節を鳴らすとその方法によっては手足の麻痺や命に関わる危険性が生じてしまうとも言われているため、なるべく骨は故意に鳴らさないようにした方が良いでしょう。
ですから、矯正で「ポキッ!」と音が出ないことで満足されないケースがあるようですが、あれは「音」を出す事がそもそも目的ではないのです。
「音」が出ることを目的とすると音が出るまで矯正を行いがちです。
そうすることによって矯正されすぎて事故につながるわけです。
関節を鳴らさないようにするには関節を急に動かさずにゆっくりと動かすようにすることで骨が鳴りにくくなり、関節へ与えるダメージを軽減できると言われています。運動などを行う場合にもゆっくりとストレッチを行って関節に負担をかけないようにします。
音が鳴るだけならいいのですが、違和感や痛みを感じた場合には当院に受診して関節や筋肉に損傷が起きていないかどうかチェックしてもらうといいでしょう。
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